傾聴のコツ
某所でご紹介いただいた本です。
僧侶である筆者は、東日本大震災をきっかけに被災地での傾聴ボランティアを開始。そのボランティアでの具体的な場面を描きながら、傾聴のコツを紹介するという構成になっています。
もともとは、聴くことを言わば「武器」にして仕事をしている身として、スキルの習得や見直しにつながるかなー?と思って手に取りました。しかしながら、単なるスキル紹介というよりも、大災害のあとのいくつかの人間ドラマを見たという読後感です。
そして、傾聴というものについては、やはり傾聴=「在り方」なのではないかと感じられる内容でした。
あいづち、繰り返し、ペースを合わせる…と言ったスキルも大切ですし、その基礎をしっかりと身につけるだけでも、「気持ちよく話してもらう」ことはできます。ただ、本当の意味で聴くということは、語られないものも含めて、相手の言いたいことを、そのままに受けとめる、あるいは感じとることであり、そのような存在になることが必要なのだと感じました。
ちゃんとそこに存在すること(※逆の状態は「心ここにあらず」)、そして相手の話を、言いたいことをしっかりと受けとめるのだというマインドというか、在り方そのものです。そして、聴くスキルとは、私はあなたの話を聴いている存在ですよ!と相手に伝えるためのものだと思います。
受けとめる!と書くと野球のキャッチャーががっちり構えているようなイメージが浮かぶかもしれませんが、私のイメージとしては、もっと自然体で、あまり余計なことは考えておらず、頭というか身体に空洞があるようなイメージです。もしかしたら名捕手はそのようなフロー状態で構えているのかもしれませんが。
もう一つ印象に残ったのは、身近な人を幸せにすることが大事だよ、というメッセージです。特に、聴くことについて、私の場合で言えば、コーチングや面接などの場面、つまりスイッチを入れている状態であれば、ある程度は「聴く存在」になれていると思いますが、日常の中でも近くの人の語られる言葉、語られない言葉をしっかり受けとめられるよう心がけたいと思いました。
プロコーチ
中村公省 Kosei NAKAMURA